最近、何度も何度も読み返している1冊がある。
『103歳になってわかったこと』(幻冬舎新書/2015年)。
美術家の篠田桃紅(しのだ・とうこう)さんの著書だ。
ご存命であれば、今週末28日が108歳の誕生日だった。
3年前、上田市で開かれた作品展に合わせ
桃紅さんの道程を辿ったドキュメンタリー制作に
関わらせてもらった。著書もその時に購入したものだ。
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海外旅行に行く日本人が年間数万人の時代に、
独り和服姿でアメリカ行きの旅客機に乗り込んだ桃紅さん。
その自由闊達な画風(書風)で世界のファンに愛された。
「誰の真似でもない。私だけの書き方」
「弟子なんかとろうと思ったことは一度もない」
「人はひとりっきりで生まれてくるんです。
そしてひとりっきりで死ぬんですよ」
(テレビ信州のインタビューより)
その力強く歯切れよいひと言ひと言が
見る者、聴く者の背中を押してくれる。
孤独がすなわち寂しいものではない、
孤独とは時に豊かなものである。
桃紅さんの姿勢から、私はそんなことを教わった。
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生涯独身、ひたすら水墨と紙に向き合った
篠田桃紅さん、享年107。
訃報から3週間。あの番組は私にとって宝物である。