長野市から高速と一般道を乗り継いで
北へ向かうことおよそ1時間半。
新潟県境が近付くにつれ、風景が白くなっていく。
下水内郡栄村は大人の背丈を超す雪の中にあった。
「たしかに暖かくはなったが、まあ雪はこんなもんだな」
集落で出会った老人が笑いながら教えてくれる。
長野県北部地震から10年の節目。栄村を訪ねた。
この10年で村の人口は4分の3に減り、
65歳以上の高齢者の割合は人口の5割を超えた。
住民数が1ケタになった集落もあるという。
「地震がなければ、こんなには減らなかっただろうに」
住民が漏らした言葉が重かった。
建て直され、改修された住宅地のすきまで
雪に埋もれた空き地や更地の多くが、
かつて家があった場所であることを忘れがちになる。
それは「復旧」であって、まだ「復興」ではない。
この意味の違いも、忘れてはならないと改めて思う。