2020/11/19 数字と想像

「ねえ、あれってあなたの字でしょ?」

夜、自宅で録画しておいた『ゆうがたGet!』を見ながら

家人がぼそっとつぶやく。同居人とは恐ろしいものである。

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 県内の新型コロナ新規感染者が1日で30人となったきのう、

生放送での解説用に私が大急ぎで手作りしたフリップ(写真)である。

データは長野県のホームページから抜粋した最新(11月12日時点)の数値。

放送中に数字が更新された場合にも即応できるよう、

時折こんなアナログな手法で生放送に臨んだりもする。

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 コロナ患者用病床の16%が埋まっているという数字に触れた際、

リモート出演して下さった感染症専門医は、この数字を厳しく読んだ。

「これは1週間前の数字であり、この数日で実数はさらに増えています」

「16%はあくまで全県平均の数値であり、北信(=県北部エリア)の病床は

 既にほぼ埋まっているのが実態です」

 前日にも出演されたこの医師は、地域の病院のベッドではまかなえず

一部の患者を他地域の病院が受け入れている旨を番組内でも話していた。

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 私たちはともすれば「まだ16%」と「まだ」を付して読みたがる。

それが少し前の数値であること、そして県平均=つまり大きな面に

おしなべた数値であることを軽く見てはいないだろうか。

地域=小さな面で見たとき、事態ははるかに厳しくなっていることまで

私たちは想像しなくてはいけないのではないか。

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 別の専門医が教えてくれた言葉を思い返す。

「今出ているのはきのうまでの数字、もしくは1週間前の数字です。

 1週間後には今の数字が何倍かになっていると思って下さい」

16%がもし2倍、3倍になったら・・・・・・。

そうならないために、今出来ること、すべきことを想像してみる。

 

2020/11/16 アメリカと信州の話②

 今回はちょっと"大きな話"になるがご容赦願いたい。トランプ大統領が誕生した4年前、

私が週1日だけ教壇に立つ大学の女子学生からこんな質問を受けた。

「アメリカは民主主義なのに、何故トランプさんが当選したんですか?」

一瞬、私は答えに窮した記憶がある。

日本とは仕組みが違うから(州ごとの選挙人総取りシステムとか)。

メディアが読み違えたから等々、一般的な答えはいくつも並べられる。

だが「民主主義なのに」という彼女の根本的な問いへの解が出てこなかったのだ。

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【写真:半年ほどスクラップしてきた大統領選の記事・資料】

かの国の大統領選は、選挙人の多い州を多数制すれば勝ちにつながる基本構図がある。

だから今回も、多数の選挙人を擁する州が激戦州として注目された。

だが、それを支えるのはあくまでも1票であり、その1票の積み重ねである。

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票が拮抗してくるとトランプさんは「期日前投票と郵便投票の集計を止めろ」

と訴えた。この2つには対立候補への票が多いからというのが理由だ。

しかし、である。期日前と郵便投票のすべてが反トランプ票ではない。

中には当然、トランプ支持者の票も含まれている。

自身が勝ちたいがために、支持者票も含めそれらを全て切り捨てるという発想。

民主主義の選挙で選ばれたトップが、民主主義とはほど遠い頭の持ち主だったという事実。

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1票でも多い側の意見が採用される多数決が民主主義の基本である。

でも、そこには多数者と少数者の議論があってこそのはず。

「少数者の声を聴く必要はない」という4年前のトランプさんの物言いは、

今度の選挙でも健在だった。1票でも多ければ全て意のままという

ある種"幼稚"な発想は、さて民主主義と呼ぶに値するものか。

「民主主義なのに、何故?」 あの彼女の問いへの答えを、私は今も探している。

2020/11/11 アメリカと信州の話①

「なんで急に?と思ってたら、大統領選挙だったんですね。

 8月ころから急に上向いてきてるんです、仕事が」

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こう話すのは、「ゆうがたGet!」水曜レギュラーの

芸人・マンモウ飯田さん(写真:放送後のTSBメイク室にて)。

私がこの曜日のニュース解説を担当するようになって

かれこれ4年のお付き合いになる。

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上向いている、というのはテレビ出演云々の話ではなく、

ご実家の本職である自動車部品製造業のこと。

実はマンモウさん、会社経営者という顔もお持ちなのだ。

コロナ禍で今年春以降ずっと低迷していた部品の受注が、

8月頃から急に増え始め、今もハイペースが続いているという。

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聞けば、アメリカに輸出する車の部品なんです、との答えが。

「大統領選挙が近付くと全米で車の売れ行きがドンと伸びるんです。

 その余波がうちにも来てて。あの国では選挙ってお祭り感覚なんですかね」

アメリカのトップが誰になるか?その日本への影響はもちろん目が離せないが、

それ以前の影響が既に日本の一地方に届いていたことに正直驚く。

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「でもね」とマンモウさんが続ける。

「選挙が終わったでしょ。この後どうなるのか正直心配なんです。

 クリスマスから年末年始にうちの仕事がどうなってるのかなって」

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新型コロナ感染者1011万人(10日/米ジョンズ・ホプキンズ大学集計)。

日本の100倍の感染者を抱える巨大国家の"祭り"がいつまでも続くわけはない。

本当に心配なのは、"祭りの後"のはずである。

マンモウさん、ご心配ですよね。

 

2020/11/06 支度して下さい!

「秀一さん、もうちゃんとした手袋して下さい」

去る水曜の「ゆうがたGet!」生放送中、鈴木智恵・気象予報士からアドバイスをもらった。

自転車通勤族の私は、その日まで指先部分の露出した毛糸の手袋(写真)だった。

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ハンドルを握る掌さえ覆っていればまだ大丈夫、と高をくくっていたのだが、

この日辺りから指先が痛いと感じる日が多くなっていた。

日差しのある朝はいくらかマシなのだが、とっぷりと日が暮れた帰宅時間は

ひときわ厳しい気がする。

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「そろそろ晩秋から初冬に移り変わる時季。冬支度もして下さいね」

とは鈴木予報士の談。

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一気に進んだ長野市・若里公園の紅葉を見るにつけ(写真はわが愛車)

僅かひと月前はシャツ1枚で風を切っていたとは思えぬ季節の移ろい。

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世の自転車族のお仲間がた、そろそろ冬支度を致しましょうか。

2020/10/29 ニコルさんの形見

 仕事場の本棚に、使い込まれた茶色の表紙の図鑑が加わった。

「長野県動物図鑑」。初版発行は昭和53年。私が中学生の時分だ。

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「辞書を引くようにしてニコルがいつも使っていたものです。

 形見分けだと思ってお持ちください」

34年間マネージャーをつとめた森田いづみさんから手渡された時、

一瞬、表紙の文字が滲んで見えなくなった。

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 4月に急逝した作家のC.W.ニコルさん(信濃町在住)の愛用品。

挟まれたままの付箋には、ニコルさん直筆の書き込みも残る。

いつも頂いていたクリスマスカードや手紙で見慣れた筆跡が、

なんだかとても懐かしく思えた。

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 ニコルさんの森づくりと作家活動を支え続けてきたマネージャー、

森田いづみさんが彼の後任としてC.W.ニコル・アファンの森財団の

新しい理事長に就任した。

「ニコルならきっとこうしただろう、こう言っただろう」

残された言葉と思いは、森田さんの中にしっかりと息づいている。

新理事長が語る、日本の森のこれからは、今夜の「news every.」で。

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