2004年度の取り組み
高校生が本物のCM制作に挑戦!!
■ はじめに
2004年度のまとめとして、高校によるCM作りをテーマのした番組制作がスタートしました。
究極の映像表現といわれる15秒のCM作りは簡単そうに見えて、実はプロでも相当に難しいシロモノなのです。
短い時間の中でいかに「商品」や「企業イメージ」を視聴者に訴えるか・・・映像・BGM・ナレーション・スーパーどれをとっても研ぎ澄まされた感性とアイデアが要求されます。
そのキメ手は「創造力」「想像力」です。
テレビ信州のメディアリテラシーは、これまで番組作りや生中継を中心に進めてきましたが、今年度はCMに裾野を広げ、あらゆる可能性に挑戦していきたいと考えています。

テレビ局は基本的にはCM制作にはタッチしません。
そのCMが色々なテレビ局で使用されるため、企業との仲立ちをする広告代理が制作し、テレビ局に持ち込むのが普通です。
このため私たちも一緒に学びながら、そして知恵を出し合いながら楽しく活動をしていきたいと思います。
■ 参加する高校生
武蔵工業大学第二高等学校 (長野県塩尻市)
3年生4名(うち女子1名)/1年生2名/計6名
■ CMを作らせていただく会社
(株)カーパークさん
学校から徒歩で5~6分の所にある県下最大級の中古車販売会社です。
現在「TSBカーパークイン塩尻」のおなじみのテーマソングでCMが流れています。
スケジュール
高校生の作品は2月ごろの完成を目指します。
その制作の過程をテレビ信州の取材班が撮影し、3月には番組として放送する計画です。
どうぞご期待ください。
その制作過程は毎月最終日曜日の朝5時15分~5時30分の「ふれあいテレビ信州」でご報告するほか、このホームページでも日記で綴っていきます。
制作日記
11月5日(金)午後3時30分
放課後、参加する高校生5人が集合。
担当の先生とテレビ信州スタッフを交えてどんなCMを「カーパーク」さんに提案するかコンセプトを話し合う。
まさにいま免許取得中の生徒から「免許を取ったあと車選びに迷い、そうだカーパークに行こう~これに決めた」みたいなCMがいいと具体的なアイデアが飛び出す。
各自企画書と絵コンテを書いて次は実際に会社にプレゼンテーションすることに。
またメンバーの役割を自薦他薦で決定。
(担当はディレクター、カメラマン、編集、BGM、スーパー、ナレーター)後日3年生1名が加わり6名のチームになりました。
企画会議 絵コンテらしきもの??? ディレクター・原君(3年)
撮影・御厨君(3年) ナレーター・柳沢さん(3年) スーパー・塩谷君(1年)
BGM・鳥羽君(1年) 音声担当・和田君(3年) 顧問の河野先生
11月18日(木)午後4時
 
いよいよクライアントの「カーパーク」さんへ。
社長さん専務さんが応対。
会議室ではこの日のために高校生が手作りした、恐る恐る名刺を差し出し 無事名刺交換。
企画書は「家族向け」2本「若者向け」2本の計4本。
社長さんからは「どれも素晴らしい。
できれば全部CMを作って欲しい」と思いがけないほどの誉め言葉をいただき一同ホッと胸をなでおろす。
ただ全部は無理なので「家族+若者」両方の要素を入れた企画とすることで合意。
練り直した企画書を再提出することになりました。
手作りといっても
立派な名刺です
緊張の瞬間!
社長さんと名刺交換
CM企画書の
プレゼンテーション
カーパーク・中谷社長さん 社長さんを前に
企画書の説明
 カーパーク・大谷専務さん 熱心に企画書を見る社長さん 助っ人のテレビ信州スタッフ
手前は中南信支社営業部の
白木、奥は編成部の湯田
11月29日(月)午後1時~
  きょうの午後はテスト明け。
さっそく前回手直しを求められた「絵コンテ」の作成にとりかかりました。
柳沢さんの案の8コマを実際にセリフでつなげたところなんと36秒もかかりました。
このためどこを落とすかをみんなで考え、時間が迫る中、5コマにまで絞り込みました。
資料作りを急ピッチ行いなんとか会社に約束の午後4時に到着。
しかし、社長さんからは「4コマで」と厳しい!?注文が・・・
ただ最後には「この案で実際にオンエアできるようがんばって」と励ましの言葉をいただきました。
12月10日(金)テレビ信州スタッフによる撮影指導会
  本格的な撮影開始を前に、映像を撮る心構えなどについて話を聞く機会が設けられました。
担当したのはベテラン報道カメラマン。
「ただカメラを回せばよいというものではない。ディレクターに言われた通りの映像しか撮らないのであれば、それは単なるオペレーター。何を伝えたいのか考えながら撮影するのがカメラマン」というプロの言葉に、メンバーはちょっぴり緊張気味に耳を傾けていました。
講義担当は報道のチーフカメラマン
このあとスタッフから課題が出されました。
それは知らない人に「武蔵工大二高」を紹介する短い映像を、学校内で4~5個所撮影してきてください。というものです。
ディレクターの原君を中心に相談した彼らが撮影したのは次の4点でした。
撮影後その映像を見ながら反省会。
カメラマンからは「撮影ポイントはわかるが、もっとほかの撮影方法があるのではないか。
撮影した目線がみな同じ」など様々なアドバイスを受けました。

① 学校の紋章が入った校舎の外観
② サッカー部の練習風景(ちなみにサッカー部や野球部は県内では屈指の強豪校)
③ 工業高校でも珍しい自動車科の実習施設
④ 学校の魅力を語る先生のインタビュー
サッカー部の練習風景を撮影するメンバー
1月15日(土)午前9時~カーパークイン塩尻にてCMロケ・天気<雪>
 
出演者:親子役5人 父役・・・スタッフの生徒のお父さん
母役・・・スタッフの生徒のお母さん
姉役・・・柳沢さん(3年)
妹役・・・スタッフの生徒の妹
弟役・・・スタッフの生徒の弟
まったく他人同士の5人が親子を演じ、免許を取ったばかりの姉を中心にカーパークへ車を買いに行くというストーリーです。
サウンドロゴは既製品(今流れている音楽)でなくロックバンドが演奏することに。
[構成]
≫家で家族団欒風景 姉 「免許とったよ。カーパークへ行うよ!」
≫カーパークにて 姉 「私かわいい車がほしい」
父 「父さんはワゴン車探すぞ」
バンドの4人が演奏するサウンドロゴ 「カーパークイン塩尻」
全員で 「みんなもおいでよ」
[問題点]
撮影後学校で編集作業したところ問題点が次々明らかに…。
① 15秒のCMなのに22秒かかることが判明。
② 映像がみなロングのグループショットばかり。
③ サウンドロゴの部分のバンドが目立ち、主役の姉役の印象が残らない。
④ 音声のレベルがバラバラで、カーパークのBGMなど雑音も拾ってしまっている。
⑤ 出演者のボディーアクションがなくつまらない。
⑥ 声や表情、5人の絡み方に緊張感が出てしまっている。
⑦ カメラポジションがなかなか決まらず撮影開始まで出演者を2時間も待たせてしまった。
[対策]
次回撮影の2月5日まで次の対策をすることになりました。
家のシーンをカットしたうえ構成を練り直し、
ロケの際はストップウオッチで図りながら撮影する。
姉と父の会話の部分はそれぞれのワンショットにする。
サウンドロゴは家族全員で歌い、バンドは脇で演奏するにとどめる。
カメラのガンマイクでなくブームにガンマイクを仕込み、出演者の近くで音声を収録する。
セリフとともに出演者の動きを考える。
ディレクターが納得ゆくまでそのシーンを撮影する。
次回ロケの2月5日までに絵コンテの練り直しとロケハンを行いカメラポジションを事前に決めておく。
[ガンバレ「むさ高生」]
3年生にとって残された時間はあとわずか・・・
CM完成まで追い込み作業となりそうですが、高校生活をしめくくる良い思い出になることを祈ります。(TSBスタッフ一同)
雪が舞う極寒の中での
CM撮影
CM撮影は
デジタルカメラです
学校での編集作業
1月26日(水)カーパークでロケハン(ロケーションハンティング)
  前回の撮影でカメラのポジションが決まらず、出演者を2時間も待たせてしまった反省から、2月5日の本番に向けて現場でロケハンを行いました。
2月5日(土)
  本番撮影再挑戦。
朝から青空がひろがるお天気には恵まれましたが、午前10時ごろから風が強くなり、さらにカーパークのすぐ横を走る国道19号の通行料が増え始め、音声の収録に苦労しました。
今度はストップウオッチを用意し、シーンごとに長さを計り撮影を進めました。
編集の結果前回22秒もあったCMの長さが15秒に納まりました。
高校生にアドバイスするTSBカメラマン CM撮影風景 前回はロングショットばかりでしたが
今回はワンショットの
アップもあります
2月16日(水)
  【CM考査】
TSBにてCM考査。
これはCMの内容に不適切な内容がないか放送局が事前にチェックするものです。
すべてのCMは必ずCM考査を受けなければならないことになっています。
今回、CM作り隊が制作した作品は内容的には問題ありませんでしたが、CMの中で表示している「県下最大級」という字幕スーパーが「それを証明する根拠がないと放送できない」という指摘があり、「改稿」することになりました。
こういった関門があるということを知ることも、勉強のひとつといえます。
  【スポンサーさんに試写】
最終試写をカーパークで行い、社長さんからは「高校生が作ったCMということに意義があります。たった1秒、2秒のことでも半日も1日もかかることがあるし、CMを作るのは大変なことだってことがわかったでしょう。」とねぎらいと励ましの言葉をいただき、メンバーは大喜びでした。
2月28日(月)
  【CMの放送開始と反省会】
4ヶ月にわたって展開されたCM制作も終わり、今日から実際にCMとして放送が開始されます。
プロのCMに混じって高校生のCMが放送されるという歴史的な日になりました。
全員が学校に集合し、その瞬間を待ちました。
放送後メンバーからは次のような感想や反省の声が寄せられました。
本当に自分達が作ったCMなのか?と不思議な感じになった。
実際に制作してみて難しいことがよくわかった。
絵コンテが15秒で作られているんだから15秒に納まるはずという過信があった。
詰めが甘かった。
1つ1つの絵(映像)がしっかり撮れればいいという感じで撮影していた。
あとで編集してみて反省した。
すべてセリフでつなぎ、BGMを使わなかったが、ほかのCMと比べて静かだった。
でもそれがかえって「何だ何だと」注目される結果になったと思う。
スタッフ後記
長かった活動も終わり、3年生はそれぞれの進路に。
また1年生は2年生へと進みます。
私たちスタッフにとっても初めての経験で、戸惑いながらも一緒に取り組んできました。
高校生のCMを完成させなければならないという大きな目的と、その活動の様子を追った55分のメディアリテラシー番組を制作しなければならないという、もう一方の大きな目的を、同時平行で進めなければならず、通常の番組制作とくらべて大変な労力を必要としました。
また冬の屋外での撮影という悪条件と、年末年始から年度末にかけての慌しい時期での活動ということも重なり、生徒も私たちスタッフも大変な思いをしたのも事実です。
しかし、CMが完成し、番組も放送にこぎつけることができ、その苦労も一気に吹っ飛んだ感じです。
CM制作を通じ、メンバーには実に多くの気付きや学びがあったことと思います。
また未知の世界に挑み、力をあわせてひとつのことを実現するという点で、メンバーの成長の跡がうかがえました。
大変にお疲れ様でした。
最後に弊社のメディアリテラシー活動にご理解とご協力をいただいた、株式会社カーパーク様はじめ、関係者の皆様に厚く御礼を申し上げます。
CM作り隊が制作したCM作品
 
〔1〕 1月15日に撮影した作品 ⇒ 長さは21秒で6秒オーバー
室内のシーンからいきなり屋外のシーンに
すべてのシーンがロングサイズでグループショット
(大勢が映っている)
しかも人物が画面の端に寄っていて不安定
マイクが遠く音声が不鮮明
 
〔2〕 2月5日に撮影した作品 ⇒ 前回の反省を踏まえて撮影。その結果
屋外のシーンはやめてすべて屋外で撮影
姉役と父親役のセリフはワンショットで映像にメリハリが出てきた
マイク延長ケーブルを用意。
物干しざおに固定し、音声を出演者の近くで収録した結果クリアな音声に
 
〔3〕 最終完成作品 ⇒ 「CM考査」で「県下最大級」という字幕スーパーが問題と指摘される。
 ┗「最大級」を証明する公的機関のデータが必要。
このため「最大級」の表現はカット
最終完成作品は実際にスポットCMとしてテレビ信州で放送されました。
高校生の活動をまとめたメディアリテラシー体験番組
「僕たちCM作り隊~クリエーターは高校生」は55分にまとめ、2005年3月21日(月)午前10時30分~11時25分に放送しました。
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