2004年度の取り組み
8 CM作り隊が制作したCM作品比較
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1. 1月15日に撮影した作品 長さは21秒で6秒オーバー
室内のシーンからいきなり屋外のシーンに
すべてのシーンがロングサイズでグループショット
(大勢が映っている)
しかも人物が画面の端に寄っていて不安定
マイクが遠く音声が不鮮明
 
2. 2月5日に撮影した作品 前回の反省を踏まえて撮影。その結果
屋外のシーンはやめてすべて屋外で撮影
姉役と父親役のセリフはワンショットで 映像にメリハリが出てきた
マイク延長ケーブルを用意。
物干しざおに固定し、音声を出演者の近くで収録した結果クリアな音声に
<2回目作品> <1回目作品>  
2回目作品は柳沢さんアップから始まる車もばっちり映っていてなんのCMか明示
1回目作品は室内ロングから屋外ロングにいきなり切り替わり
 
1回目作品はセリフが長くまだ同じシーン
2回目作品は家族がそろいカーパークのテーマソングを歌う
2回目作品はカーパークの歌にあわせ、売り場の広さがわかる俯瞰ショットに切り替わる
1回目作品はこのあとも21秒まで続く
▲UP
9 最終完成作品
セリフ「免許とったよ!私かわいい車がほしい」
*高校生が制作したことをスーパーで表示
セリフ「お父さんはワゴン車を探すぞ」
CMテーマソング「TSBカーパークイン塩尻」
*家族で合唱
CMソングにあわせて売場の俯瞰カットをインサート
*「県下最大級」の表示はカット。
 かわりにネット 検索8万8000台と品揃えの多さをアピール
セリフ(全員で)「これからドライブだ~」
▲UP
10 成果物
* 最終完成作品は実際にスポットCMとしてテレビ信州で放送された。
(2005年2月28日~4月30日 15秒スポット133本)
* 高校生の活動をまとめたメディア・リテラシー体験番組
「僕たちCM作り隊~クリエーターは高校生」
(2005年3月21日(月)午前10時30分~11時25分放送)
▲UP
11 メンバーの主な感想
<出演者の柳沢さん>
* CM作りって、こんなに大変で難しいかということを、身を持って感じた。
* 自分がCMに出たということは一生の宝。将来自分の子供にも話してやりたい。
* 表情の作り方、声の出し方が難しかった。
* 完成作品は車内のカットは人物の顔に影ができていた。
* 絵コンテを書いていても15秒に入るのか不安だったが、その通りだった。
<カメラマンの御厨君>
* とりあえず今、目の前の映像を撮ることで精一杯、編集のことを考えていなかった。
だから、映像をつないでみて、後で考えの甘かったことがわかった。
* 将来カマラマンになりたくて、ある程度はわかっていたつもりだったけれど、作業をしていくうちにわからないことがたくさん出てきた。
* プロのCMに比べると自分はもっと勉強しないといけない。
* 企画書作りやクライアントへのプレゼンなど、CM制作はロケに入るまでにすごく時間がかかることがわかった。
<音声担当の和田君>
* 絵コンテが15秒で出来ているのだから、絵コンテ通りに作っていれば15秒に収まるという過信があった。詰めが甘かった。
* CM制作はクライアントがいるので、いちいち了解得るのが大変だった。
* プロのCMはいろんな効果が入っている。
自分達は技術的に無理だったが、高校生なりの作品には仕上がり、達成感を感じた。
<ディレクターの原君>
* 自分達のCMが本当に流れて(放送されて)不思議な感じがした。
* ほかのCMにBGMがあるのに、自分達のCMにはない。
それがかえって見ている人に「何だ、何だ」と、注目される結果になったのではないか。
* ディレクターとしてメンバーをリードし切れなかった。
<スーパー担当の塩谷君>
* プロのCMと比べ、BGMがなくて不自然な感じもした。
* CM作りの裏側が見られて良かった。
▲UP
12 番組審議会の合評より
* タイトルからして感動、泣き笑いなどを期待していたが、教育テレビ風で最初の部分が説明調だった。
* 番組の最初に完成したCMを見せた方が引き付けられたのではないか。
* 何でこの子たちがCMを作るのかわからなかったが、学校、中古車センターとタイアップしてやらせているのではないかと思えた。
そう考えると、これはメディア・リテラシーに取り組んでいるテレビ信州の自社宣伝番組ととらえるとわかりやすいのではないか。
それにCMも付けて一石三鳥を狙ったテレビ信州のすさまじい戦略を感じた。
* CM考査があるというのを初めて知った。
ただスタッフは初めからわかっていて、子供たちがそれに引っ掛けられているのではないかとも思った。
* 最初はつまらないと思って見ていたが、しばらくすると絵コンテなども書いて本格的な活動をしていた。
完成したCMは素朴なローカルのCMだった。
下手くそだけど面白いマンガのようだった。
* メディア・リテラシーのことを知らない主婦の目から見れば、最初に説明してもらって良かった。
* 最初に完成したCMを流した方が、インパクトがあったのではないか。
全体にメリハリに欠けていた。
* 中古車センターの社長の「泥臭くてうんと良かった」というコメントと最後に高校生が言っていた「不思議な感じがした」という言葉が印象に残っている。
* これからもメディア・リテラシーのことがわかる番組を作ってほしい。
* CM作りの苦労が分かって良かった。ひとつのことを成し遂げるのは大変なこと。
* 企業は自分達の仕事を地域に知らせるべき。そういう意味でいい試みだった。
* 番組の導入部がもたもたした感じだったが、全体は面白かった。
* 俳句でも限られた字数で表現しなければならない。CMも同じ。
* CM考査があることを知らなかった。
* このことで子供たちの人生が変わっていく。
こういう活動通じて社会と接触したほうが、「マイチャン」で宣伝するより効果的だ。
* 今の高校生の傾向かもしれないが、CMを作りたいという意思の表明が不明瞭だった。
ただ番組を見ているうちに参加している高校生(特に女子)が、だんだん可愛く感じられるようになってきた。
* こういう番組に挑戦したのは大英断だと思う。スタッフの皆さんもご苦労様でした。
* 「カーパーク」の名前が頭の中に残った。
* ほかのCMと一緒に流れても"埋もれていないCM"になっていた。
* 最初の高校生の意欲が伝わってこなかった。
それが番組の後の流れに影響していた。
* カメラが回っているので遠慮していたのだろうか? 先生との会話など普段のシーンも撮影していれば出してほしかった。
* 1時間番組にしては物足りなかった。
* テレビ信州はメディア・リテラシーに積極的に取り組んでいるので、他の局が手出し出来ないように、もっと取り組んだ方がいいのではないか。
* 今、大学でも「表現する」というのがテーマになっている。
これからもいろいろ協力してやっていきたい。
* 高校生の試行錯誤や苦悩がよく表れていた。
またスタッフも粘り強くやっていた。
* 高校生の問題意識が希薄で、熱意もあまり感じられなかった。
* スポンサーの社長の温厚な性格が良く出ていた。
カーパークの宣伝効果は絶大だったのではないか。
* 高校生の動きに注目して見ていたが、マスコミ志望という生徒もいたが、「CMを作るという希望」と「実際に作る難しさという現実」の違いが如実に出ていた。
* 高校生に甘さがあったが、それがスタッフの指導で徐々に変化していくという対比が良く出ていた。
* こういう機会が与えられたことに、この高校生は感謝しなければいけない。
* 同じ高校の生徒や他校の生徒にも良い教訓になった番組ではないか。
* スタッフの人たちが遠慮気味で、奥ゆかしさを感じた。
* こういう番組は意味のあることだと思う。
▲UP
13 日本テレビ「メディア・マガジン」プロデューサー小山啓氏の評
* 高校生の作ったCMを本物のCMとして放送するという発想は、日本初かもしれない。
* 海外では営業の仕組みもメディア・リテラシーの授業に入れているらしいので、そうした意味でもなかなか意義深いものがあると思う。
▲UP
14 テレビ信州スタッフの反省と学び
* 人事異動の後すぐスタートを切れず、活動の時期としては悪かった。
途中に正月休みがあったり3年生の進路の時期と重なったりして、集中的にスケジュルを組めず参加生徒のモチベーション維持が難しかった。
また、冬の屋外撮影など気象条件に苦労した。
* CM作りのフォローをするスタッフと取材Dは、最初から別に立てるべきだった。
(両方への目配りを1人でするのはかなり困難)
* スタート前にスタッフによる十分な打ち合わせをしておくべきだった。
毎回行き当たりばったりの活動になってしまった。
* 同じカメラマンを通しで確保できず苦労した。
* 高校生の制作が暗礁に乗り上げた時「TSBのスタッフ会議」を開き、その苦悩の様子も番組に入れ込むべきだった。(スタッフも出演者との位置付けが必要)
* 営業面で若干の貢献ができて新たな可能性は感じたが、こうした方法で営業活動を継続していくと逆作用も考えられる。
* どこまで生徒に指導していいかわからなかった。
あまり口を出しすぎると「プロが作った作品」になってしまい、自主性を引き出せないのではないか。
* 先生のかかわり方が不明確だった。担任でも部活の顧問でもないし…。
もっと生徒を叱咤激励してもらうよう事前に打ち合わせるべきだった。
叱咤激励のシーンも番組要素としてあっても良かった。
* 取材陣を取材するデジカメを入れなかったので、番組に厚みが出なかった。
* 生徒はカメラを意識しており、デジカムがあれば何気ないシーンも撮れたはず。
* 今までの「出前授業」+「3分間のミニ番組作り」+「生徒のニュース出演」という手法はそれなりに意味があるが、生徒がテレビの特性を学ぶプロセスを掘り下げて伝えるという点では、苦労は多かったが55分番組にして良かった。
▲UP
15 まとめ (テレビ信州 メディア・リテラシー推進委員長 平坂雄二)
視聴者が、こんな感想を寄せてくれました。
「番組の中で作られたCMが、その後テレビで流れているのを見て感激しました。
あの番組で高校生がやっていたCMだ、って」
たまたま今年度の取り組みを聴きたかったのかも知れませんが、番組放送後に通信社や新聞社、さらに総務省からの"取材"が相次ぎました。
「メディア・リテラシー活動に、営業が絡んだのは初めてですか」
「作ったCMを実際に放送することは、最初から企画されていたのですか」
いずれにしても、注目度の高い試みであったことを示しています。
テレビの特性を理解するには、実際に番組を作ってみることが最も効果的です。
テレビ信州が展開するメディア・リテラシー活動(「出前授業」等)は、良くありがちな一方通行で「テレビとは、"机上論"」を展開するのではなく、ワークショップを軸にした双方向の"実学"を基本にしています。
すなわち、私たち局スタッフと一緒になって番組を作っていくプロセスを重視しているわけで、これまで約20の学校・団体(学童クラブ、中、高校)で「3分番組」を制作してきました。
ニュースやドキュメントを想定して「事実を取捨選択して再構成した現実」であることを体験的に知るのが「3分番組」とすれば、今回の「CM制作」は15秒という「究極のテレビ表現」のなかで、現実にはあり得ないことでも構成できる"作り物"を作ること。
コンセプトに応じて実に多様な情報を送り出しているテレビメディアの特性とともに、スポンサー、商業ベースに拠って立つ民放テレビの実態を学ぶことでした。
3年越しの企画。タイトルの「CM作り隊」も当時すでに決まっていました。
発想の原点のひとつに「営業展開も想定できるメディア・リテラシー活動」、民放ならではというべき視点がありました。
といっても、今回のようにスポンサーの獲得はあくまで結果論です。
先に記したように、民放テレビにおけるリテラシーに、営業の仕組みは欠かせないファクターだからです。
番組の中で、メディア・リテラシーの視点をさらに深めるためには、△なぜ、ファミリーか△どうして、両親と子ども5人家族に設定したのか△「中古車を買う決定権はお父さん」という設定に疑問はなかったのかーなど、さまざまな検証過程を取り入れなければならなかった、という思いがあります。
それでも、今回の「CM」作りは、私共にとって初めての試みであり手探りの挑戦でしたが、テレビ信州のメディア・リテラシー活動にまた新たな可能性を見いだした取り組みでもありました。
▲UP
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