日曜の朝、ちょっと頑張って早起きし、
軍手と雨合羽を羽織って通りへ出る。
山車(だし)の通り道となる町内に
ご近所さんと一緒にテントを張り、
会所(かいしょ)と呼ばれる休憩所をこしらえる。
実に3年ぶりとなる「ながの祇園祭」だった。
【善光寺への坂道を登る山車/12日午前・長野市大門町付近】
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山車の上から音曲に乗せて披露される踊りを見ながら、
隣にいるKさんが、ほんの少し涙ぐんでおられた。
数年前にご主人を亡くされ、今は一人ぐらし。
「良かった、またお祭りが見られるようになって。
主人が見たらもう大喜びだったでしょうに」
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ご近所さんに声をかけられ、話は弾んでいた。
「来年もきっと出来ますよ。また待ちましょう」
善光寺への坂道をゆっくり登っていく山車の背を、
Kさんはいつまでも見送っていた。