式典もなく、かつての友人同士で集まる場もなく。
成人の日のきのう、長野市内は穏やかな印象だった。
道行く晴れ着姿も見かけることもない。
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かくいう我が家は、今年二十歳になる息子とともに
昔お世話になった近所の老夫婦の墓前へ成人の報告に。
観音の石像が並ぶ杉木立の奥に老夫婦は眠っている。
足跡のない雪を踏み分けながら坂道を登る。
かつて数軒先のご近所にあった二人の家は、
ようやく歩きはじめた息子の遊び場でもあった。
実の祖父母以上にお世話になったといってもいい。
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二十歳を迎える祝い、というよりも
この歳まで何とか育ったことに感謝する日。
そんな成人の日であっていいような気がする。
19年前、私の両掌にすっぽり収まっていた息子は、
いま両手で墓石の雪をかき分け線香を手向けていた。
手を合わせる背中がいつもより大きく見える。
あれ?その着てるコート、オレのなんだけど・・・・・・。