駆け寄ってきたのは私と同年輩だったろうか、
ひとりの小柄な女性だった。
献花台の横に立って警戒していた警察官の前に来ると
「(容疑者が)捕まったニュースを見ました。
有難うございました、本当にお疲れ様でした」
深々と頭を下げると小走りで立ち去った。
腕に「機動隊」の腕章をつけた制服の警察官も、
その後ろ姿に向かって極めて丁寧な黙礼を返していた。
容疑者逮捕の一報を受け、事件現場となった長野駅前で
市民にインタビュー取材していた日曜の出来事だった。
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事件後、街中で何台もすれ違うパトカーの車体には
「新潟県警」「警視庁」「千葉県警」などの文字が。
信号待ちをする時も、時折後ろに誰がいるのかを
振り返るような日々だった。
容疑者が逮捕されたから「安心・安全」が戻ったとは思えない。
福岡の事件も思い出しつつ、同様な事件がまたいつか
どこかで起こらないとは言い切れないのだろう。
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けさ、通り掛かった駅前の現場は、いつものように
バスを待つ人たちが静かに列をつくっていた。