子供の頃、共働きだった両親がよく口にしていた。
「長く使うもの、イイものを買おうと思った時は、
長野ならあの店とこの店。松本だったらこことそこ......」。
今週月曜で閉店した松本駅前の「井上本店」は、
そのうちの一軒であったと記憶する。
所用で松本市内へ出かけたきのう、店舗前まで足を延ばしてみた。
シャッターが降り、人通りのほぼない舗道はやはり寂しかった。
◇
私は憶えていないのだが、公務員を定年退職した当時の母が
「昔、あなたを連れて松本までスーツを買いに行ったのよ」
と懐かしそうに話していた。
店が人の流れを作り、街の顔も作っていく。
その店がなくなることは、街の顔も同時に変わることを意味する。
母の記憶の中にある松本駅前は、どんな顔をしていたのだろう。
いつか訊いてみたい気がする。